
| 太古の音が、いま、「いのち」の歓びに響き合う CD 「歓・響 サヌカイト」 より
サヌカイト〜古への石の音色に魅せられて 藤井むつ子インタビュー 雑誌 Be-All 2月号より カーンカーンと美しく幻想的な余韻を響かせる石は古くからカンカン石と呼ばれ、その澄んだ音色で人々に親しまれてきた。この石は、遥か1350万年前の大規模な火山活動で噴出し、今の四国・讃岐地方で採れることからサヌカイトと名づけられている。今から約20年前、讃岐金山の所有者・前田仁氏はこの石の響きの虜となった。この音を子供達の心に届けたい、この音で多くの人の心を癒したい、そう感じた前田氏は楽器の研究開発に私財を投じた。こうしてサヌカイトは、本格的な楽器として新たな命を吹き込まれて5年が過ぎた頃、マリンバ奏者の藤井むつ子さんと出会った。 「ちょっとこの音を聞いてみてくれって知人に聞かされて、驚きました。今まで聞いたことのないほど、透明感のある美しい響きだったんです。もっと聞いてみたくなり、すぐ四国に行きました。100点位並んでいる石の楽器を片っ端から打っていたら、あっという間に1日が過ぎました。すっかりサヌカイトに魅せられてた私は、とにかくこの楽器を弾きたい!と思っていました」 ところが同じ打楽器でも、マリンバは木、サヌカイトは石である。木と石は、打った瞬間の反動が違う。木は打った力を吸収するが、石は跳ね返ってくる。これでは、叩き方もマレット(叩く物)も替えなければならない。藤井さんは、色々と研究を重ねた。 「なかなか、慣れているマリンバのようには、うまく扱えませんでした。木と石は別の素材だぞという意識が私の中にあって、構えてしまっていたんですね。ところがある時、ふとした拍子に、木も石も同じものだという感じがしたんです。そうしたら気が楽になり、肩の力が抜けたのでしょうか。意識しなくても、それぞれを自然に打ち分けていて、違和感なく演奏できるようになりました。そうなると、マリンバは木の音がして、サヌカイトはちゃんと石の音がするんです。打ち方そのものは違うけれど、心の垣根が取り払われて、どちらとも自然に関われるようになったんだと思います。両方の楽器に柔らかい音が出せるようになったのは、サヌカイトと出会ってから10年もたっていました」 サヌカイトの響きは、その形状によっても趣を異にする。藤井さんが主に用いているのは、木琴のように鍵盤を並べた石琴型と、長方体の石を音階順に並べて釣り下げた編鐘型と、サヌカイトの岩石塊に切り込みを入れただけで音階のない原石型である。 「石は、不思議な力を持っているのではないかと、思うことがよくあります。特に原石型は、相性のよくない人が叩くと、割れてしまうんですよ。私にとって音楽は、好きな人と一緒にいてお喋りを楽しんでいるのと同じなのです。弾けば弾くほど響いてくれて、本当に嬉しくなり、また次に弾きたくなります。以前は、弾き手である私と楽器の間に意識の壁がありましたけど、今は全くありませんね。楽器の前に立つと嫌なことも忘れ、自分が音の中にズーンと入ってゆく感じがあります。楽器と私が同化しているようです。それは私がそうしているのではなく、石の力がそうさせてくれているのだと思います」 創作者前田氏の願いが石に通じたのか、今では医療現場や教育現場からも演奏の要望が高い。そういう時には、藤井さん自身も気づきが大きいという。 「昔から肌で感じると言っていたのを思い出します。肌って大事ですね。その場の空気を察知するんですよね。ご病気の方や赤ちゃんは、特に敏感です。周囲が緊張していると、すぐ伝わってしまいます。お母さんや先生がまず癒されて、音の中にスーッと入っていった時に、子供も同じ状態になります。みんな一緒にリラックスできる、その柔らかい空気をどう伝えてゆくかが、課題ですね」 藤井さんとサヌカイトの響き合いが、聞く人にも伝わるのだろう。コンサートでは、サヌカイトのことを知らずに来た方でも、心が洗われたような気持ちになったとか、自分のことをもう1回見つめ直すことができた、といった感想が多い。 「音楽の原点は、葉っぱが風に揺れる音、水の流れる音などの自然の音だと思います。ですから私のCDには、南禅寺で録音してきた1番鳥の啼き声や神大寺の水の音を、サヌカイトの石の音と共に入れてあります。サヌカイトは、太古の自然の営みから生まれた命。その響きは、私達が忘れかけている大切な何かを思い出させてくれるような気がします」 遥か悠久の周波数を持つ大自然の響きは、時を超えて果てしない宇宙の広がりや生命の源を伝えているのかもしれない。
2000年 ニューヨーク・カーネギーホールにて邦人初の邦人作品初の紹介演奏 2002年 5月4日東京文化会館にて 三善晃作品にてマリンバ・サヌカイトコンサート開催
藤井はるか 東京芸術大学器楽科卒業 2001年ジュリアード音楽院卒業 2000年4月カーネギーホールにて母 藤井むつ子と共演 現在はアメリカ各地でソロ、オーケストラ、室内楽など幅広い分野にて活躍し マネス音楽院より全額の奨学金を受けて在学中 藤井里佳 東京都立芸術高等学校音楽科卒業 代表演奏者として 他校交流演奏会に出演 2000年4月カーネギーホールにて母 藤井むつ子と共演 2002年3月 桐朋学園大学演奏学科打楽器専攻を卒業 |